ここ最近見た映画の中では一番の作品です。

ナチの迫害を逃れ、アメリカに亡命したユダヤ人哲学者、ハンナ・アーレントと、ナチの戦犯アドルフ・アイヒマンを裁いたイェルサレム裁判とを巡るこの映画は、「何が悪を引き起こすのか。人が何をしたとき、又はしない時、悪を引き起こすのか」という問いを私の中に生じさせました。

アドルフ・アイヒマンと言う人は自分のことについても、また戦争当時の自分の職務の性格、地位に伴う責任や自分の行為の結果などを何も理解していないなと思いました。

そして恐ろしいことに、現代社会においても自分や社会のことについて何も考えていない人はあまりにも多くいます。

我々はみな、アイヒマンの息子ー言い古されたこの言葉の持つ重みを、この映画を観て改めて恐ろしく感じました。

しかしアーレントは、「人は考えないものだから」という絶望的な結論に屈することなく人間らしく生きる希望をこの映画の中で力強く私たちに訴えかけてくれます。

思考することー人間だけが持つ、この特異な能力こそが人間を人間たらしめ、どんな絶望からも救い出してくれるものなのだというこの映画のメッセージを、私は忘れないと思います。

人や自分のことを考え、思いを巡らすことは、愛の行為なのだという希望のメッセージに満ちた映画です。